850円の極み。続・平野さん

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今朝はここ数日で一番涼しくて、朝おきてすぐにラーメン日和だ、と思った。

数日前からずっとラーメンが食べたくて、数カ月ぶりのラーメンを食べるのにふさわしいタイミングをみはからっていたのだ。

以前から気になっていた「座銀」というラーメン屋の道順を、ベッドの中ですぐに確認する。鶏のスープで、ゴボウの揚げがのっていて、店内がおしゃれらしい。ちょうど泊まっているホテルから近くて安心した。

とっておきのご飯を食べるときは、事前にたくさん情報を集めて、そのイメージを頭にたっぷり描いてからお店に向かいたい。その方が、料理が目の前に出てきたときに、ある種の達成感のようなものを味わえる。

久しぶりの休日らしい休日は、数十分歩いても汗が出ないくらい涼しかった。歩くのが楽しく思える日は、何をしても楽しいものだ。長期休みの始まりが幸先良くて、うれしくなった。

そのお店には11:00の開店時刻ぴったりに到着したけれど、すでに数組のお客さんが列をなしていた。上品な服装の奥さん達や、若いカップルもいて、ラーメン屋さんらしからぬ客層に、ふぅん、と思う。

お店の前の券売機で看板メニューのラーメンを買っていると、すぐに店員さんが出てきて、お水を渡してくれた。待っている間にお水をくれる気遣いがうれしい。

並んでから15分程度で店内に入ることができた。ラーメン屋というより、日本料理屋のようなお店。調理人たちも、綺麗に髪をセットしていて、掛け声も穏やか。ラーメンの臭いがたちこめる店内で、自分がどこにいるのかわからなくなるような、不思議な気持ちだった。

ラーメンは、席についてすぐに出てきてた。その美しい姿に、思わずため息がもれそうになる。パリパリしたボゴウの揚げも、白色のコクのあるスープも、大きくてトロっととける鶏も、全てがかんぺきだった。ラーメンの器やコップも美しい釉薬がかけられた陶器でできていて、どこまでもいきわたっていた。

「ありがとうございました。良い一日を!」の声に見送られて外に出る。お腹も心もすっかり満たされた。ラーメンはもちろんおいしかったけれど、昨日に続いて今日も、丁寧で心がこもった仕事をする人たちに交われた、そのことが幸せだった。

その足で、昨日の荷物を受け取りに倉庫へ向かう。届けてくれるのも平野さんかしら、と昨日から少し気になっていたけれど、約束の時間に現れたのは、やっぱりくるくるパーマの平野さんだった。仕事の手際は相変わらず良かったけれど、昨日のような元気はなくて、何だかしょんぼりしていた。

色々あるよね、と心の中でつぶやく。昨日わたしに元気をくれた平野さんだって、こんな日もあるのだ。さっきのラーメン屋さんを紹介したい気持ちでいっぱいだったけど、思いとどまって見送った。きっとこれが、平野さんとの最後の別れになる。

 

 

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