3カ月ぶりの大阪。夏は散髪と一緒にくる

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今日は、髪を切ると決めていた。3カ月伸ばしっぱなしだった髪はひどく傷んで色素が抜けていたし、散髪というのは、何かの始まりにはふさわしい行為のような気がした。

3カ月ぶりの大阪はうだるような暑さで、歩くたびに汗がしたたる。空気もモワッと重くて、むせかえるような臭いは、小笠原のそれとはだいぶ違っていた。

けれど、今日はこの都会のエネルギーが、妙に心地よかった。けだるそうに歩く人々も、そびえたつビルも、何だか懐かしくて元気づけられた。

目的の美容室は梅田の外れにある。ここに出会うまで、私は一つの美容室に通い続けたことがなかった。髪を切ったりマッサージされたりするのは、いつだって非日常の出来事であってほしい。毎回同じ美容室で同じ人に髪を切られるなんて、しっくりこなかった。

初めて訪れる場所で、初めて会う人が私の髪を切る。美容室はそういう場所であってほしかった。

でもその美容師さんだけは、何度会っても初めて会うような気がする。私の髪のことで頭がいっぱいで、私自身のことはどうでも良さそうだったし、会話をしているとたまに他の人と間違えられているような気もするから、私が誰なのか、本当に識別していないのだと思う。

美容師なのにスキンヘッドだということも、彼に興味をそそられた理由の一つだった。

自分の髪は生やさないけれど、彼は心から美容師という職業を愛しているのだと思う。一つ一つの手の動きがとても美くしくて、無駄がなかった。髪のことにとても詳しくて、私の頭の骨格を私以上に熟知していて、美容室のケア用品を売ることより、自宅でできる簡単な手入れを教えてくれた。

「最近仕事はどうですか?」とか「夏休みは何するの?」とかいう、あの美容室特有の、示し合わせたような会話をしなくてすむこと、髪を切ることを愛している人に髪を切られるということが、心地良かった。

これは推測にすぎないのだけれど、おそらく彼は、心は女の人な気がする。鏡を見つめる彼を見て、改めてそんな気がした。まぁ、どちらでも構わないことだけれど。

美容室から出た私の髪はだいぶ短くなって、生き生きとしていて、すっかり元気を取り戻したみたいだった。

髪の長さも色も変わったから、帰りに化粧品も新しく買いなおした。

髪をいじりながら歩く帰り道、「髪を切ったくらいでは人生は変わらないんだけど、髪を切ったら人生が変わったって思える人はほんとに人生変えられると思う。」いつか誰かがそんなことを言っていたことを思い出した。

あたりはもう暗くなってきていて、今頃小笠原は夕暮れの時間だな、と思った。今日の夕日はきれいだったかしら、と。

時間軸の感覚をこちらに呼び寄せるまでには、まだ時間がかかりそうだ。

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