10月9日(火)

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目覚めたら6時半だった。
こんなにぐっすり寝たのは2カ月ぶりぐらいかもしれない。

起きてしばらくどこにいるのかわからなくなって、ぼーっと天井を見た。

淹れてもらった珈琲を飲んで、急いで身支度を整えて、予約していた美容室に向かう。

道行く人たちの歩く速度は私よりもずっと早くて、ここは日本だと思った。風はもう秋の風になっていて、そんなことを感じられるのも、やっぱり日本だと思った。

ネットで見た情報では美容室は駅から1分と書いてあったけど、私は迷いに迷って30分くらいかかった。
いつものことだから驚かないけれど、改めて自分にがっかりした。生まれ変わったら地図をもって旅に出かけるような人になりたい。

初めて行く美容室での表面をなぞるような会話が苦手で、職業や身の上を聞かれたりすると自分とは違う誰かとして振る舞うことが多い。

今日は事務職のOLとして東京で働いていることにした。あまりにも話が広がらなくて楽だったけれど、今度は売れない女優とか画家とかアーティスティックな人生を話してみたい。

でもやっぱり、本当のことをボソボソ話したくなったり、話さなかったとしてもほうっておいてくれる落ち着ける美容室を早く見つけたいかな。

軽くなってパーマがかかった髪は思ったよりも気に入って、気持ちが軽くなった。
髪を切ると少しだけ新しい人生をスタートできるような気持ちになるから、便利な性格だと思う。

そのあとは不動産屋さんに行って、いくつか部屋を見せてもらうことにした。
そこでもやっぱり身の上話を聞かれたけれど、美容室で適当なことを話してしまったことを少し後悔していて、今度は本当のことを話した。

インドネシアで暮らしていたことを伝えると、「インドネシアといえば・・・」と言いながら不動産屋さんのお兄さんが言葉に詰まってしまったので、「バリですかね・・・?」とこちらから助け舟を出してあげた。

「あ!バリもインドネシアなんですね。そっか、そっか。しかも行ったことあります私。バリ。」とお兄さんは言った。

やっぱりインドネシアよりもバリの方が有名なんだと思って、インドネシアをかわいそうに思った。そういえば数年後のオリンピック候補地にインドネシアが名乗りをあげたというニュースを今朝見た。がんばれ。インドネシア。

見てまわった物件はどれもいまいちという感じで、決めることができなかった。
日本の家って、なんで2年住まないと違約金を払わなくてはいけなかったりするんだろう。2年も同じ家に住まなきゃいけないと思うと気が遠くなる。

内覧からの帰りの車で、「最近、ネパールやインドネシア人がいきなりうちの窓口に来ることが多くてね。しかもカレー屋ができる店を貸してほしいって言うんですよ。うちは賃貸アパートしか扱ってないのに。」そう言って不動産屋さんのお兄さんが笑った。

「カレー屋ですか。おもしろいですね」と言って笑い返したけど、たぶん、カレー屋をやりたいのはインドネシア人じゃなくてインド人じゃないかと思った。

あたりを見まわすともう薄暗くなっていて、街灯がぽつぽつとつきはじめた。

日が落ちるの、早い。

家探しは、そんなに急がなくてもいいかもしれない。

 

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