生まれ変わった定期船と、始まりの24時間

おが丸

私が初めて小笠原行きの定期船に乗ったのは、20年前、5歳の頃だった。

船寝返りをうてば隣の人にぶつかってしまうぐらいの狭さの雑魚寝の船室で、家族3人28時間揺られた。当時のことはもうほとんど記憶にないけれど、ひどく船酔いして何も食べられず、心配されたことだけ片隅に残っている。

それから20年の間に、その船は2度生まれ変わることになる。私は先月就航されたばかりの、できたてほやほやの船で、これを書いている。

生まれ変わったその船は、一言で言うと、とても素敵だった。

ロビーはとても広くて、ダンスホールのように解放感があったし、新しい船内を見渡す人々は、なんだか楽しそうだった。

雑魚寝だった部屋に4000円程度足せばカプセルホテルのような部屋にアップグレードできたし、寝相の悪い私でも3回くらいは寝返りをうてる。コンセントがついているから好きなだけ充電もできる。

搭乗して10分、良い船旅の予感しかしなくて、ワクワクした。

IMG_2926.JPG

船に弱私は本来なら25時間部屋に閉じこもり、ご飯も食べずにひたすら寝続けるのだが、部屋に閉じこもっていたらバカみたいな気がして、外に出た。

明るい照明でおいしそうなレストラン、小笠原のお土産が詰まったショップ、窓際のベンチに、海風が気持ち良いデッキ。どれもそれぞれに楽しい時間が過ごせそうだったけれど、私はその時間の多くを、展望ラウンジで過ごした。

IMG_2942.JPG

美味しいコーヒーが好きなだけ飲めて、コンセントがあって、海を眺めながら仕事や勉強ができる。最高だった。そこで周りの会話を聞いてるのも、楽しかった。

「○○で見た景色は本当に綺麗だったね」とか、「○○で食べた○○は本当においしかったね」とか、旅の思い出を語る観光客の若者もいれば、「おばあちゃんは元気かな」とか「着いたら○○に行きたい」とか話す島民の声も聞こえる。

IMG_2920.JPG

現実と非現実のはざま。あるいは新しい始まり、もしくは終わり。ラウンジには、人々の何とも名づけられない余白の時間が流れているような気がした。

私は今までのことより、これからのことを考える時間が多かった。着いた翌日には髪を切ろう、とか、懐かしいあの人は元気かな、とか、黒くなったねって笑われるんだろうな、とか……。それはきっと良いことなんだと思った。そう思うことにした。

IMG_2940.JPG

東京は数日前に梅雨が明けたそうだ。良いことは続く。ラウンジからもずっと青空が見える。船を下りたその先が、今は楽しみだ。

 

 

IMG_2902.JPG IMG_0505.JPG

IMG_2822.JPG

IMG_2886.JPG

IMG_2652.JPG

IMG_2843.JPG

The following two tabs change content below.
梅野 なぎさ

梅野 なぎさ

’91生まれ。2017年よりインドネシアで働いています。 【Mail】bonin.makani@gmail.com