父と山の家、それからコーヒー。

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父を思い出すと、一緒にコーヒーの香りが漂ってくるくらい、父はいつもコーヒーを飲んでいた。

子どもの頃、朝起きてリビングに降りていくと、きまってカリカリというコーヒー豆が挽かれる音が聞こえて、なぜだかテレビにはBBCの英語のニュースが映っていて、食卓には食パンとジャムが並んでいた。

父は食パンを一枚食べて、私は半分に切ってその一片を食べる。母が食パンを食べている記憶はないから、きっと母は朝食は食べる習慣がなかったのだと思う。

食パンと一緒に、コーヒーを飲む。そして食後にもう一杯飲む。仕事中のことはわからないけれど、休日に家にいると昼間にも数杯飲んでいたから、きっと1日に5杯は飲んでいたんじゃないだろうか。

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父が山奥に家を建て始めたのは、私が中学生くらいの頃だった。

 

家が建てられたのは、もともとは開墾されていないジャングルだった土地。父は建築家でも何でもないサラリーマンだけれど、草木の伐採から始まって、土台作り、施工から家のかたちになるまで、その全てを一人で作り上げたという。

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当時私は思春期真っ盛りで (まぁ、そのあとも数年は続くのだけれど……) ふだん父から何を言われても「ふーん」とか「それで?」とかしか言わないふてぶてしい娘だったのだけれど、父が建てたというこの家に入ったときは、こっそり、この人すごいじゃないか、と思った気がする。

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船と、海と、音楽と、お酒。父の好きな物が全て詰まった家。

人生を楽しむことと、自分を幸せにすることと、生きる力に長けている人だと思う。

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10年後、かつて思春期のふてぶてしい娘だった私は、少しばかり分別ある娘のようになって、その家に入った。

やっぱりコーヒーの匂いがして、家はあたたかくて、父はやさしくてつよかった。

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梅野 なぎさ

梅野 なぎさ

’91生まれの25歳。だいたいの方がそうであるような気がしますが、旅と音楽と食べ物が好きです。【Mail】bonin.makani@gmail.com