夜明け前と、おいてきたいつか

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ときたま、その時間を過ごすためにだけ起きることがあるほど、夜明け前の数時間が好きだ。

0時をまわってもバイクのエンジン音や、人々の戯れる声がやまないインドネシアでも、夜明け前の3時から4時頃は人の気配がなくなり、部屋の換気扇の音と自分の心音だけが、規則的にながれる。

人々が起きる前の、しんとした世界。世界の始まりのような、終わりのような、自分しかこの世にいないのではないかとさえ思えてくる時間の孤独と安心感。

ふぅーと息をはいて、自由だなと思う。

寝返りを打って、枕に顔をうずめて、ぐぅーっと伸びをする。

ふらふら起き上がって、そのままコーヒーを入れる。ラジオをつけて、またぼーっと天井を仰ぐ。

やっぱり自由だ、と思う。

***

ちょうど一年ほど前の今ごろ、私は閉じ込められた気持ちでいっぱいになって、逃げ出すように飛び出てきた。

信じるものがそこになくなったこと、不気味なことが重なったこと、その場所に飽きてしまったこと、理由はいくつかあげられるけど、たぶん、結局、ただ一人ぼっちになりたかっただけなんだと思う。

「ひとりが好きなのだ」と言うと、強い人だね、と言われるけれど、誰かの気持ちと生きられる人の方がずっと強いと思う。

喜びや悩みや不安を共有することは、他人の気持ちを引き受けることになるし、家の帰りを誰かが待っていることは、存在をあずけることになるし、そういった、自分が自分のものだけでなくなっていく感覚が、少しずつ怖くなった。

だから、自分の隅から隅まで、もう一度自分だけのものにしようと思った。取り戻したかった。

***

あれから1年たった。

もう充分かしら、と思うことも、たまにある。

けれど、やっぱりまだしばらくは、自分の全てを自分だけで抱えておきたいと思う。

夜明け前の孤独さや、気まぐれで作ってみる料理や、自分のために捧げる祝杯が、まだまだ愛おしくてたまらない。

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梅野 なぎさ

梅野 なぎさ

’91生まれの25歳。だいたいの方がそうであるような気がしますが、旅と音楽と食べ物が好きです。【Mail】bonin.makani@gmail.com