【焼尻島】ただ「決める」ということ

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お盆休みに訪れた焼尻島の風は、大阪よりもずっとひんやりして気持ちが良かった。大きな空と広がる水平線。孤島に生活を据えるということは、人々が想像するより自由ではないことは十分に知っているつもりだけれど、ふらっと訪れただけの私には、やはりそこは自由な場所に感じた。

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その女性には、焼尻島で参加したハイキングツアーで知り合った。前日に焼尻島に行くことを決めて、何の予定もたてずに青森から出発したのだという。穏やかでいつまでも話していられそうな、少女のように可愛らしい女性だった。知り合って30分ほどで「わたし手相が見られるのよ」といって私の両手を握った。

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「どんな状態であっても、自分がこうだと思ったら迷わずまっすぐにそっちに進む。突拍子がなさすぎて周りの人にはその行動が理解できないことが多いけれど、私自身の中にはしっかり理由や目的がある。だから大切な人には面倒臭がらずにちゃんと自分の気持ちを説明するように。人の好き嫌いが激しい。1回嫌いだと思ったらもうだめ。情熱家。組織ををつくることには向いている。金運がある。」

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だいだいそんなことを言われたと思う。隣で聞いていた友達がニヤニヤしながら「そうかも!」「たしかに!」とか言っていたけれど、私は思いあたるような気もしたし、そうではないような気もした。

迷わず進む、という部分はそうかもしれないと思ったけれど、大嫌いな人はそんなに思いつかなかった。どちらかと言えば、大好きな人が2人くらいいて、あとは皆同じくらいだ。それに、組織を仕切ったりするのはあまり好きじゃない。くじとか抽選とか当たったこともないし、金運は特別あるとは思えない。

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「35歳で落ち着いて、40歳ごろに道が定まる。」そんなことも言われた。良かった。私も落ち着けるのだ。このままフラフラ彷徨う一生じゃなくてよかった。その言葉だけ、妙にほっとした。

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ツアーの終盤に、島で唯一のカフェに連れていってもらった。それはとても素敵な場所だった。ビンテージ品と古書がぎっしり並べられた店内。レコードのゆるんだ音色とチャイの香り。

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東京で活躍していた有名な建築デザイナーがオーナーなのだそうだ。十年ほど前に焼尻島で引っ越してきたのだという。70代ぐらいだろうか。綺麗にメイクをした美しい白髪のそのオーナーに、私はどうしても聞きたくなって質問した。

「なんで焼尻島に住もうと思ったのですか?」

オーナーは迷わず笑顔で答えた。

「そう決めたからよ!きーめたって思ったの。麻布も赤坂も恵比寿も・・・今まで皆が憧れるような場所にずっと住んできたわ。飽きっぽい性格だからね、ここに来るまでには2年ごとに引っ越していたの。でもね、10年前に思ったの。ここに決めようって。悩んだりはしなかった。 決める、ただそれだけのこと。」

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決める、ただそれだけのこと。どんな理由を聞くよりも、そのときの私には一番腑に落ちる答えだった。この言葉を聞けただけで、ここに来てよかったと思った。

手相を見てもらって安心したり、誰かの言葉で背中をおしてもらったり、人に相談して楽になったり、私たちは色々な方法で自分の問題を乗り越えようとするけれど、結局は自分でそう決めるか、決めないか、それだけだと思う。誰も他人の責任をもつことなんてできないし、自分で決めてしまえば進むしかない。

オーナーが自分でスパイスを調合して煮詰めたというチャイは、ちょっぴり辛くて優しくて、今まで飲んだどのチャイよりもおいしかった。

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梅野 なぎさ

梅野 なぎさ

’91生まれ。2017年よりインドネシアで働いています。 【Mail】bonin.makani@gmail.com